2020.02.20
大規模修繕工事
一般的にみられるマンションの補修工事や”大規模修繕工事”が、建築基準法で定められている大規模な修繕とは異なることは前回お話した通りです。
では、この一般的に考えられている”大規模修繕工事”はどこからきたものなのでしょうか。その理由はそれぞれの定義づけに起因すると考えられます。
そこで今回は、国土交通省のガイドラインでの定義についてお話したいと思います。
国土交通省のガイドラインとは
国土交通省では、建築基準法に基づき、マンションの改修・建替え等についての詳細を記載したガイドラインを公開しています。
(参照:国土交通省|マンションの改修・建替え等について)
http://www.mlit.go.jp/common/000028135.pdf
ガイドラインでは、マンションの現状や、改修、建て替えについて、現状のデータと法律なども絡めて、さまざまな角度から情報を提供した内容になっています。
なかでもマンションの大規模修繕工事については、ガイドラインの「2.マンションの改修等について」の中で具体的に記述されています。
その内容をまとめると、
1.マンションの経年に伴う劣化や不具合に対しては、大規模修繕等の計画修繕を適切に実施していくことが必要
2.高経年マンションでは、質及び価値を長持ちさせていくために、修繕による性能の回復に加えて、現在の居住水準・生活水準に見合うようマンションの性能をグレードアップし、住みよいマンションにしていくことが重要
と、この2点を喫緊の課題として挙げています。
また、ここでは修繕、改良、改修について、下記のように定義されています。
修繕・・・部材や設備の劣化部の修理や取替えを行い、劣化した建物又はその部分の性能・機能を実用上支障のない状態まで回復させる行為
改良・・・建物各部の性能・機能のグレードアップ(マンションを構成する材料や設備を新しい種類のものに取替えることや、新しい性能・機能等を付加することなど)
改修・・・修繕及び改良(グレードアップ)により、建築物の性能を改善する変更工事
大規模修繕工事の定義とは
ちなみに国土交通省のガイドラインの中で、大規模修繕は「マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう。」と書かれています。
つまりは工事に必要不可欠である工事費用とその工事規模に具体的に言及しています。
建築基準法のような、マクロ的な観点から「建物の修繕と、国民の生命・健康・財産の保護」定義したものとは一線を画していることをご理解いただけるでしょうか。
国土交通省のガイドラインは、一定の調査を踏まえ構造体としてのマンションと、実際に居住する人々の生活に言及したものとなっています。
調査データから
平成5年度、11年度、15年度に行われた調査によると、大規模修繕は鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上防水工事が主な工事内容となっており、その実施時期は平均で10年前後というデータが出ています。
また、大規模修繕工事に使われた工事費用の総額は、その63.6%が6千万円未満となっていて、こうした状況からも、先の2.で挙げたマンションの性能グレードアップを意識した工事があまり行われていないかったことがわかります。
実際に、マンション管理センターには、大規模修繕に対する理解に乏しいと思われる相談事例も散見されており、最適な「大規模修繕工事」を推進していくべき管理委員会の深い理解を求める意味も含め、このガイドラインは上梓されていると考えられます。
まとめ
前回と今回を通じて、建築基準法と国土交通省のガイドラインとで、大規模修繕工事の示す内容が異なることがご理解いただけたかと思います。同じ用語を用いているので分かりづらいかもしれませんが、混乱しないように気をつけましょう。