2019.02.22
大規模修繕工事
マンションの大規模修繕工事の中で鉄部塗装と聞くと、まず頭に浮かぶのが手すりではないでしょうか。
手すりは住人が日頃触れる箇所なので、仕上げが気になるところです。その仕上げを左右するのが防錆作業です。「防錆」は鉄部の塗装工事における大事な工程となっています。
今回は塗装工事の「鉄部塗装工事」についてお話します。
鉄部塗装工事とは
鉄部の塗替えは、一般的に5~6年で実施するのが望ましいと言われています。ただし昨今では材料の耐久性も上がっており、一概に5~6年で塗装しなおさなければならないというわけではありません。
重要なのは、耐久期間を目安とするのではなく、使用状況や劣化状態に応じた塗り替えです。錆が発生してからの対応では遅いためです。
鉄は空気と水に触れるとさびが発生します。この茶色い変色を伴うさびは、外壁の外観を悪くしたり、門扉や雨戸など構造物に発生するとしまりが悪くなったりなどのマイナス面が大きくなります。さびが出る前に塗り替えを行えば、塗装によって保護されるため、鉄部の寿命は延びていきます。
ではいつ塗り替えをするかの見極めを、どう行うかということになりますが、ひとつの目安として、チョーキング現象が起きていれば塗替え時期と考えます。
チョーキング現象とは、塗料の中に含まれる樹脂が太陽や熱、雨水などで劣化していくことで、塗料の中に含まれる顔料が表出する現象です。その状態で外壁を触ると手に塗料(粉)が付きますのですぐに確認できます。
ちなみに塗膜の劣化は5段階程度に分けて観察できます。
最初に「表面のつやがなくなる」、次に「色あせが見られる」、そのあとに「チョーキング現象がみられる」ようになります。チョーキング現象が発生するまでおおむね3年から5年程度が目安です。
チョーキング現象が現れたにもかかわらずそのまま塗装せず放置すると、「ひび割れ」が発生、まもなく「塗膜がはがれ」鉄部が露出してしまうでしょう。
鉄部塗装工事の工程
では鉄部塗装工事の工程を追ってみていきましょう。
4工程で行われ、ケレン→下塗り→中塗り→上塗りの順で行われます。
ケレン
さび落としの作業で、塗り直しに欠かせない作業です。錆を落としきらずに新しい塗材を塗っても意味はありません。ケレンは鉄部の耐久性や塗りなおした後の仕上がり良否にかかわってきます。
下塗り
下塗りはさび止め用の塗料を塗る工程です。変性エポキシ系プライマーと呼ばれるもので、刷毛やローラーを用いて塗装するのが一般的です。
中塗り/ 上塗り
下地を保護する塗料を塗っていきます。塗料の種類はさまざまですが、耐久性を重視する場合はフッ素系塗料が使われます。上塗りにも同じ塗料を塗ります。
鉄部塗装工事のチェックポイント
鉄部塗装工事を委託した際は、工事の最中に下記のポイントをチェックしましょう。
ケレンを行っているかチェック
鉄部塗装にケレンは欠かせません。この工程を行いさび取りを行わなければ意味がありません。見積もりの時にケレン作業ありかどうか事前確認し、実績を確認しておくと安心です。また塗装完了時に施工前と後の写真を見せてもらいましょう。
下塗り塗料に防錆・防食塗料が使われているかチェック
下塗り剤にさび止め染料が使われているかチェックしますが、見た目には分からないので、使用染料をチェックし、さび止め染料に該当するものがあるかチェックします。
上塗り塗料の耐久年数は大規模修繕工事のサイクルに合っているかチェック
塗料の耐久年数と大規模修繕工事のサイクル合わせることが重要です。塗料の耐久年数が5年、大規模修繕工事が10年ごとの場合、大規模修繕工事の前に一度塗り直しを行わなければならなくなってしまいます。将来の費用負担、工事の手間を考慮し塗料の選択をしましょう。
塗料の塗布量を守っているかチェック
塗料の塗布量が少なければ、いくら耐久年数が長くてもそこまで持ちません。塗膜の膜厚を基準値の通りにしなければ、十分な耐久年数が得られなくなります。基準塗布量をしっかり守る業者かどうか確認する必要があるでしょう。
塗装後はしっかり乾す
せっかく新しく塗装をしても、乾く前に塗装が剥がれてしまっては意味がありません。特にメーターボックスなどのドアをうっかり閉めてしまうことはありがちです。
十分な乾燥期間を取るために、事前に居住者に鉄部塗装を行っており、しばらく触れないでおいてほしい旨を説明しておきましょう。必要であれば、「蝶番おこし」などを使うなど検討しましょう。
まとめ
鉄部塗装工事は、一見するとただ外から塗料を塗りなおすだけとみられがちですが、実はそうではありません。
大規模修繕工事のサイクルとともに鉄部塗装をしっかりとスケジューリングし、鉄部の劣化をケアしていくと良いでしょう。