2018.11.22
大規模修繕工事
大規模修繕工事と一言でいっても、その中で行われる工事には実に多くの工事が含まれています。それぞれの工事の詳細を知ることで、大規模修繕工事全体への知識を深めることができます。
そこで今回は大規模修繕工事中の「仮設工事」についてお話します。
仮設工事とは
仮設工事は現場で働いたことのない方は、外側から見える足場の組み立てのことだと思われているかもしれませんが、実はあの足場は仮設工事の中の一部でしかありません。
電気や水道、トイレなどの仮設工事や、完成後に行う清掃・片付けと言った形に残らない工事も含め、仮設工事と言います。
仮設工事には、大きく分けて共通仮設工事と、直接仮設工事があります。それぞれの詳細を知りましょう。
共通仮設工事
共通仮設工事とは、工事が始まる前に作られ、終わるときには撤去される設備等を作る工事です。
工事を円滑に進める上で重要な施設を作るために行われ、居住者とのコミュニケーションの窓口にもなっています。
例えば現場事務所の仮設工事においては机やいす、電話、コピー機など事務機器の導入や、インターネットを利用するためにパソコンやネット接続のための設備も作られます。
工事用機器類を使用する電力がマンションからの借用分で足りない場合は、ポータブル発電機の使用のほか、工事用臨時契約を締結し、外部から直接引き込むことになります。そのための仮設配線や仮設盤の設置も仮設工事の一部です。電力だけでなく、排水処理のための仮設工事も行われます。
その他、共通仮設工事には、作業員詰所の設置、資材置き場、仮設倉庫、仮設トイレ、洗い場などの設置も含まれるほか、段差や危険な場所を周知するための安全標識の設置、マンションのエントランスなどに、洗濯物に関連する工事情報の提供などを行うための工事用掲示板の設置も含まれています。
共通仮設工事の費用は、マンションの状況によって増減することがあります。たとえば現場事務所を設置するスペースがない場合は、外部のマンションを賃貸するため費用がかさみますが、マンションに集会室等があり、そこを借用できれば、費用の発生を抑えることもできます。
直接仮設工事
足場仮設工事とも呼ばれる直接仮設工事は、施工品質を保ち、補修材や塗料などの飛散を防止するなど、施工時の安全確保を実現するために必要な工事です。
マンションの大規模修繕工事で組まれる足場は、枠組み足場が主流となっています。エントランスや駐車場の出入り口など足場が不安定になる場所は梁枠を用いたり、開口部があったりする場合には上部の壁面にブラケットを固定して足場を組み上げるなどの工事を、別途行います。
こうした枠組み足場のほか、低層の建物ではクサビ連結式足場仮設工事が行われることもあります。反対に超高層マンションでは、「高所作業用のゴンドラ」や「移動昇降式足場」などの足場が採用されることが多くなります。
どんな形式の足場仮設工事においても、足場の周りには危険防止、飛散防止、また作業員の安全を確保するためのメッシュシートによる養生が行われます。以前はメッシュシートは白色が主流でしたが、最近は室内からの透視性が高く、圧迫感が緩和される黒色が採用されることが一般的です。
また足場から不審者の侵入を防止するために、1階廻りには鋼製のメッシュフェンスの取り付けやセンサーライトの設置、赤外線センサーによるセキュリティシステムの追加を行うなどの付加的な工事も行われます。
足場仮設工事を行う際には、障害物となる樹木、植栽などの処置のほか、居住者の私物が置いてある場合はその片付けなどが伴いますので、業者との打ち合わせが必要になるかもしれません。
まとめ
このように仮設工事は、大規模修繕工事の前に設置し、工事完了後には撤去される物全てが対象となります。
そのため、設置場所の確保や障害物の撤去など、管理組合様が想像しているよりも多くの検討材料や対策が必要になることも考えられます。
工事に着手してから慌てることのないよう、事前に施工業者としっかり相談・打ち合わせをしておきましょう。