2018.07.06
大規模修繕工事
快適な暮らしをより長い期間続けたい。分譲マンションにお住まいの方にとっては普遍的な願いではないでしょうか。
このような希望を実現させるために必要となるのが大規模修繕工事です。
経年劣化などによる性能低下を防ぐ為、 定期的に工事を行う必要があることはすでにお話させていただいた通りですが、実行に移す際には年々積み重ねていくべき準備が必要となります。大規模修繕工事を過不足なく実施するために必要なものが「長期修繕計画」です。
今回はこの「長期修繕計画」についてお話します。
長期修繕計画とは
長期修繕計画とは、マンションの修繕工事及び資金計画を含めた管理組合の運営のために、組合が作成する長期的な修繕計画を言います。
長期修繕計画は居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るための根幹となる計画です。それだけに十分な準備のもと綿密に計画を練り上げていく必要があります。
大規模修繕の成否はこの長期修繕計画に掛かっていると言っても良いかもしれません。
長期修繕計画の目的
長期修繕計画の目的は以下の通りです。
- ・将来の修繕・改修工事の内容、時期、概算費用を明らかにする
- ・修繕工事のために必要な費用について、積立金の額を明示する
- ・長期修繕計画に関する合意を取り付けておき、工事実施を円滑に
主にこの3つの目的があります。特に気を付けるべきは積立金の額です。修繕費用は未納などで費用が不足しないよう定期的に一定額を徴収し、実施に備えて置く必要があります。長期修繕計画の名のもとに住民の納得を取り付け、徴収すべきです。
長期修繕計画の作成において、基本的な指針とすべきは以下の項目となります。
- ・建物/設備の性能、機能を新築時と同じレベルに維持・回復
- ・法定点検や定期的な補修工事の実施を前提に計画に織り込む
- ・金額面(金利、消費税率、費用の価格変動等)は計画作成時の想定条件を明示
長期修繕計画の内容
長期修繕計画の目的を明確にした後、計画の内容を作成していきます。
国交省のガイドラインによると、長期修繕計画の内容は、次の5項目が挙げられています。
- ①計画期間の設定
- ②推定工事項目の設定
- ③修繕周期の設定
- ④推定修繕工事費の設定
- ⑤収支計画の検討
これらの項目ごとに詳細を決めていきます。
長期修繕計画の中で特に重要となるのが「修繕工事の内容」と「資金計画」です。
<将来必要な修繕工事の内容>
どこを(工事項目)、いつ(修繕周期)、どのように(工事仕様)進めていくのかを設定します。各年度別の修繕工事計画表を作成し、一覧にしておくとわかりやすくなります。
<資金計画>
推定工事費用(数量、予測単価)を設定していきます。こちらも各年度別に修繕費積立計画表を作成し、現状の修繕費における見直しの検討材料としていくと良いでしょう。
長期修繕計画の収支
修繕費積立計画表などに基づき、予想支出(推定工事費用)に対して、予想収入(修繕積立費)を試算し、現時点で収支に不足がないかのシミュレートを行っていきます。
将来的に資金が不足すると見込まれる場合には、修繕積立金の改定や、工事項目の優先順位付けなどが必要になってきます。こちらは定期的に見直しを行っていく必要があります。
長期修繕計画の費用区分
修繕積立金はどのような工事にも使えるわけではなく、マンション本体、団地の共用部分、駐車場部分など別会計にしておく必要があります。
費用負担区分は、専有・共有区分と直結しているので、マンションの規約などを確認しながら試算するとよいでしょう。
長期修繕計画の見直し
先ほどから何度か触れていますが、長期修繕計画の内容は定期的な見直しが必要です。
マンション標準管理規約の第32条-3に「長期修繕計画の内容については定期的な(おおむね5年程度ごとに)見直しをすることが 必要である。」と書かれている通りです。大規模修繕工事を1度終えたからと言って、マンションの維持管理はそこでは終わりではなく、マンションを利用し続ける限り続きます。一度目の工事、二度目の工事といったように、工事の結果を踏まえた、長期修繕計画の見直しを都度行っていく事が大切です。
マンションの管理組合だけでそれらを行うのは大変です。それだけに長年にわたってマンションの維持管理を共に続けていくための、良いパートナーを探しておくとスムーズです。