2018.06.22
大規模修繕工事
大規模修繕工事を実施する際、建物調査診断に先がけて行う予備診断の調査のひとつに「アンケート調査」があります。
これは実際にマンションで生活している人々を対象にしたもので、アンケート調査を居住者に行うことで、外観や共有部分の調査からでは判明しづらい不具合を見つけ出しやすくなるほか、住民がアンケートに答えることで、これから長く続く大規模修繕工事に関わるきっかけ作りや、工事に関するアナウンスメントの役割を果たすことができます。
今回はこの「アンケート調査」についてお話します。
アンケート調査の目的
冒頭でも触れましたが、アンケート調査の目的の一つは、居住者目線による不具合の発見です。
外からはわかりづらい部分、たとえばベランダの天井から雨漏りがある、ひび割れがある、塗装が剥げているなどの不具合や、普段から生活しているからわかること(手すり部分の取り付け口が動く、となりとの仕切り部分に腐食がある、ネジが緩んでいるなど)もあります。こういった不具合をアンケート調査によって把握することで、修繕工事をより実りのあるものにできます。
またアンケートの形をとるため、より個人的な意見を言いやすくなります。総会などの場ではなかなか言えない要望など、潜在的なリクエストを掘り出せるのもアンケートならではです。
特に気づいた箇所や修繕箇所がなかったとしても、住民自身がアンケートに答えることで、これから行われる大規模修繕工事がどのようなものなのかを周知でき、関心を持ってもらえるというメリットもあります。
このようにアンケート調査の目的は、住民自身の目線に合わせ意見を集め、また住民の意識を大規模修繕工事に向けさせる、2つの目的を果たすことができます。
アンケート調査の項目
ではアンケート調査で住民の方々に何を聞けば良いのでしょうか。
まず記載項目として、部屋番号は必須になるので忘れずに項目を設けます。
内容は大きく分けて室内、共用部、そしてその他と分けておくと整理しやすいかと思います。
「室内」
- ・漏水がないか、あるとすればどの部分か
- ・結露が発生しやすいか
- ・通風・換気:においなど気になる点はないか
- ・玄関の扉、サッシなど金属箇所に錆などの不具合はないか
- ・室内のリフォームを行ったことがあるか
- ・夏は熱がこもりやすくないか
- ・水の出や排水が悪いと感じたことがあるか
- ・テレビ視聴やインターネットの接続は問題ないか
「共用部」
- ・バルコニーや手すりの塗装に剥げなどはあるか
- ・廊下、階段などの水漏れはあるか
- ・駐輪場、駐車場、遊び場などの野外施設の状況
「その他」
- ・その他気づいたことなど(自由記載)
- 自由記載項目を設け、幅広く意見を集めるのを忘れずに。
回答しやすい質問項目にすること
アンケートで調査したい項目を子細にピックアップできたとしても、回答者にとって答えづらい形、たとえばすべて記述式になっていたのでは、記入が面倒になってしまい、期待する回答が得られない可能性もあります。
アンケートを作る際に工夫として、
- ・選びやすい選択肢を設ける
- ・回答例を記入しておく
- ・専門用語には解説をつける
などの対応を行うと良いでしょう。
調査結果から見えること
アンケート調査を回収し、回答を眺めていると見えてくることがあります。
それは、気になる点は人それぞれ、細かいことを気にする人とそうでない人との間には差がでるということです。意見のすべてを鵜呑みにするのはリスクがあるので注意しましょう。
また居住者の回答から、それぞれの専有部分の不具合が把握できるのはもちろん、同様の不具合報告が多く寄せられれば、マンション全体の劣化レベルが分かります。
加えて上下、左右など、不具合の発生が近隣に集中しているものもあれば、専有部分のみの不具合ではない可能性もあるわけで、住戸内立ち入り調査の対象をそうした情報をもとに決定していくことも可能です。
まとめ
アンケート調査は大規模修繕工事の第一歩として、貴重な情報収集のチャンスです。有益な情報をたくさん得られるよう、アンケート項目は慎重に吟味するようにしましょう。