2018.08.24
大規模修繕工事
大規模修繕工事には想定外のことも起こります。それは想定外の費用発生です。
大規模修繕工事には当然予算があり、資金も無尽蔵ではありません。思わぬ理由からの費用増大が避けられない場合もありますが、どんな出来事が起こりえるのか、計画前にアンテナを広げておくことによりこの「予想外」を減らすことは可能です。
今回のこの「思わぬ工事費の増加ポイント」についてお話します。
足場の設置条件
マンションには建物の形や大きさ、隣接する建物や道路などそれぞれの規模や立地条件が異なります。中には施工業者もあまり経験のない形状をした建物もあり、修繕工事になくてはならない足場の設置が難しい場合があります。
通常より足場の設置が難しい場合、足場の設置費用が増加します。
▽足場の追加費用が掛かるケース
- ・駐車場や通路が狭い
- ・内部が吹き抜けになっている
- ・土地が斜めになっている
◆実際の事例をご紹介します
【敷地が狭く、機械式駐車場が建物に近接した小規模物件の事例】
このケースでは、足場の仮設計画がそもそも難しく、しかも工事期間中は住民の車両の移動先として9台分の駐車場を確保する必要があり、工事会社が手配を行った。当然ながら工事期間中の駐車費用が掛かるため、思わぬ費用が発生した。
またこちらの物件では、開放廊下と住戸の間に吹き抜けがあり、その部分にも足場を設置する必要があるなど、他のマンションよりも仮設費用が掛かっています。
さらに築20年を超える物件であったため、工事計画の時点で修繕対象部位は多かったとのこと。もちろん費用には限りがあるため、足場を架ける外壁改修工事、そして住戸に絡むバルコニー等の防水工事を最優先し、ほかの修繕個所は次の機会に行うことになったそうです。
配管周りの作業場所
マンションには給水、ガス、電気幹線などのライフラインが集まっているメーターボックスが設置されていますが、メーターボックスやパイプスペースの扉が小さく、配管更新の作業場所が確保できない場合があります。
▽配管回りで追加費用が掛かるケース
- ・扉が小さく配管更新ができないため露出配管に
- ・最終的には収まるが、作業用に仮設の配管が必要に
- ・壁を解体し扉を大きく広げる必要がある
当然ながら配管が露出したままでは見た目にも悪くなります。また扉が小さいながらもなんとか露出させずに配管更新が行えたとしても、仮設の配管が必要になると余計なコストがかさむこともあります。
災害による劣化
大地震、水害などの影響で思わぬ箇所の修繕が必要になる可能性があります。
▽地震や台風などで追加費用が掛かるケース
- ・クラック、タイルの浮きが予想数を大幅に超えている
- ・大きな揺れでシールが切れたり、コンクリートが破損
- ・増水のため、外構工事が必要になる
- ・ベランダ浸水のため漏水が発生している
◆実際の事例をご紹介します
【タイルの浮きが予想数を大幅に超えた】
タイルの浮きや劣化が予想よりもはるかに上回り、当初多めに「用意していた16万枚のタイル貼り替えに加え、さらに5万枚の追加が生じました。タイルの追加に関しては生産が追い付かなかったため、施工方法の検討や工程の調整が必要になり、当初は竣工が2カ月遅れる事態に。
【近年の台風やスコールのような雨による想定外の事態】
屋上の露出アスファルト防水が漏水し、アスファルト保護シートにひび割れ及び膨れ等が目立った状態になっていた。ルーフバルコニーは保護コンクリート表面の風化が全般的に見られ、パラペット部分のウレタンのひび割れも数多く見受けられたため、想定外の費用が発生。
まとめ
予想外の費用が発生すると予算に限りがある以上、作業の優先順位を付けが発生し、あぶれた部分を次回に回す、資金の追加徴収をするなどの対応に迫られることとなります。日頃からこれらのことに注意し、このように実際の工事例を検討しながら「予想外」を少しでも減らせるように気を配っていきましょう。