2017.12.01
大規模修繕工事
どんな建物でも時間がたつにつれ、汚れやひび割れ、設備の不具合など様々な箇所が劣化していきます。
劣化には目視でわかるものもあれば、外見では判別ができないものもあります。場合によっては、建物の造り方が悪かったために想定外の劣化が起きている場所もあります。そうした建物の劣化状態を判断し、修繕工事が必要かどうか見極める調査を、建物調査診断と言います。
この調査は、修繕工事を実施するために行われる事前診断ですので、大規模修繕工事の発注先が決まったら、まず初めに行う必要があります。
建物調査診断では、建物の各部分、設備機器等の劣化や動作状況等を調査し、将来の稼働を予測して、修繕方法、修繕時期など、必要な対応策を明確にすることを目的に実施されます。
ちなみに建物調査診断は大規模修繕工事前だけでなく、長期修繕計画の見直しのために行われることもあります。
建物調査診断結果によっては、長期修繕計画に記載されている工事をすべて行う必要がないという判断になる可能性もありますし、修繕積立金の不足により予算が足りず、長期修繕計画からコストカットを行わなければならないケースもあり得ます。
そのために建物調査診断は有効な調査となります。
建物調査診断のための予備診断とは
建物調査診断に先がけて、不具合の早期発見や最適な診断方法の決定等を目的とするのが予備診断です。
予備診断には主に資料調査とアンケート調査の2種類の方法があります。資料調査では設計図書や修繕履歴等の記録、建物・設備等の現況との照合確認を行う調査です。
一方アンケート調査では、全戸を対象としてアンケートを行い、不具合をあぶりだしていく方法です。こうした調査のほか、同時に簡単な目視調査を行うのが一般的です。
調査診断のレベルと内容
建物診断調査にはいくつかの段階があります。
大規模修繕工事の実施時期や建物の劣化状況によって、いつにどれくらいの規模で工事を行うかを選択します。
・一次診断
建物の劣化状況を把握し、建物にどれくらいの危険性があるかの判断を目的とした診断です。
設計図書などの確認、目視での確認に加え、簡単な検査機器を利用して診断を行います。
・二次診断
劣化による危険性の判断や改修が必要な箇所の判断を目的とした診断です。
主に共有部分である場所を対象とした非破壊検査によってもその診断が可能です。
・三次診断
より詳細な診断を行うのが三次診断です。場合によっては局部的に破壊試験を行い診断します。
調査診断報告書
建物調査診断の内容は「調査診断報告書」に記載します。
建物各部の劣化状況など、診断の結果は報告書として書類にまとめられます。
塗膜やタイルの付着力強度試験、コンクリート中性化深度試験、シーリング物性試験などを行った場合も同様に、それぞれの調査結果を報告書に記載します。
報告書には、修繕や改修が必要かどうかの判断や、改修の実施時期と方法、実施範囲なども記載されます。
そうしたことから長期修繕計画の作成・見直しや大規模修繕工事の内容の検討材料に役立てることができるのです。
まとめ
本当に修繕工事は必要かどうかを判定する材料になるほか、コストや工事の規模、工期などを決める上で重要な建物調査診断。この調査は大規模修繕計画を実行していくうえで非常に有効な方法なので、ぜひ覚えておいてください。